
小畜は通じる。密雲して雨ふらず、我が西郊よりす。
一言で言うと
蛇にとって犬は「いつか共に過ごしたはずの昔の友人」です。
全般
蛇と犬は爻において下爻のみが異なる、非常によく似た存在ですが、蛇は犬と直接深い関わりを持ってはいけません。
蛇と犬はかつて仲の良い地元の友人同士のような関係であったことが想像できます。それは豊かで心温まる思い出かもしれません。
ですが、その向かう先は正反対で、蛇は過酷な運命を受け容れて厳しい環境へ自ら赴こうとしている一方、犬はいつまでも同じ場所に留まって「このままで善いじゃないか」と叫んでいます。そして蛇には「お前は変わっちまったな」と言うかもしれません。
蛇と犬の卦である「小畜」は、六十四卦の中でも特に物語性の強い卦辞で構成されています。蛇は犬の元へ「もしかしたら今なら楽しく話せるかもしれない」「今の自分の姿を見て喜んでくれるかもしれない」と赴きますが、その期待は虚しく打ち砕かれることになります。
あなたの行くべき場所は温かい過去ではなく、過酷な未来です。犬の間では何一つ成し遂げられません。西に戻ってそれを理解したら、心を鬼にして東に向けて旅立ってください。
交友
蛇は犬と交友関係を持つことは困難で、もし本格的に仲良くしようとすると自分自身を犬に変質させなければなりません。
下爻のみが異なる場合は下爻が陽のトーテムが有利になるという原則があり、蛇は犬に対して蛇のままで交友を続けることは出来ません。もし無理に犬の意識を変えようとしたり、環境を変化させようと試みた場合、犬の手痛い反撃を喰らうことになります。
許されるのは、せいぜい1回か2回の過ちです。どうしても犬と仲良くできないか模索したいのであれば、狐を連れて行くことを強くお勧めします。狐は犬に対して正しく対話ができる上、危機に鋭く反応してくれます。狐がダメといったらやめておきましょう。
恋愛
蛇と犬の恋愛は悲恋にしかなりません。遠距離恋愛や障害の伴う、ままならない間柄で想いを伝え合うことがあるかもしれませんが、少なくとも、犬が犬のままで、蛇が蛇のままで安らかに結ばれることは困難です。
もしもあなたが蛇で、犬に恋をしているのなら、いつかその人が何かに向けて頑張りはじめることを祈って今は辛抱しましょう。あなたでは犬を変化させることは出来ません。
仕事
仕事における蛇と犬の相性は最悪で、蛇は犬を絶対に仕事に関わらせてはいけません。
蛇が深く思考し具現化を試みる領域は、場合によっては呪いを含んで周囲に害を発生させる危険な場所です。そして犬は著しく呪いに弱い生き物ですから、あなたの仕事に関わらせるだけでなく、近くに居たり話を聞いたりするだけで呪いに巻き込まれてしまう可能性があります。
あなたの仕事は最も成熟した者が全力で成し遂げなければ恐ろしい化け物に堕してしまうような領域で行われますから、犬のような未熟者と直接やりとりをしてはいけません。
百害あって一利なしです。
闘争
蛇は犬に対して全く敵いません。百戦百敗と考えてください。
相手は犬じゃないか、大した奴じゃない、などと思っていると酷い目に遭います。特に犬は周囲の同情を引くこととあなたのなけなしの良心に訴えること、そして向こう見ずな捨て身の攻撃を仕掛けることを得意としていますから、理知的で線の細いあなたの戦略は何も意味を成しません。相手は何も考えていないのです。
蛇は犬と戦うのではなく、犬を回避することを念頭に置きましょう。敵前逃亡こそ大吉です。あなたが直接出ていきさえしなければ、あなたの仲間である猿も牛も狐も犬に対して強力な反撃を加えてくれるはずです。あなたはそれを黙って遠くで見ていることに専念しましょう。
叡智
蛇が犬に対して大事なのは「置いていくこと」です。
あなたではこの猛獣を飼いならして連れて行くことはできません。そしてこの猛獣を生み出したのはこの世界に巣食う既存秩序です。憎むべきは自分の無力でも相手の無理解でもなく、このどうしようもないシステムを作り上げた輩です。
今はこの悲しい断絶を前に嘆いたり儚い希望に縋るより、あなたが成し遂げなければならないことに邁進すべきです。