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牛トーテムは、歴史で龍蛇信仰に続いて現れる非常に古い象徴です。
古代シュメール、中国、ギリシア、インド、もちろん日本にも牛を象徴とする信仰の形態が存在します。
龍・蛇が世界各地のどこでも共通して「創世か破滅の物語」として語られるのに対して、牛の物語は地域によって大きく様相が異なります。
特徴的な2つのケースを挙げてみましょう。まずは日本に伝わる「勤勉な牛」の伝承です。
むかしむかし、あるところに、怠け者の小僧がいた。小僧は食っては寝てばかりいたので、あるとき目を覚ますと牛になってしまっていた。
小僧は泣く泣く山へ入り、草を食んで生きていたが、そこへ旅のお坊様が通りかかった。お坊様は牛の話を聞いてやり、連れて帰って休ませた。
あるとき、寺のお堂が雨風にやられて倒れてしまった。どれだけお坊様が押しても柱は元通りにならない。
そこへ牛が立ち上がって、柱を懸命に押した。牛は体をいっぱいに使って踏ん張り、とうとうお堂を元通りに直して見せた。
それ以来、牛はお坊様について懸命に働き、豊かに過ごしたという。
この「食べて寝ていると牛になった」という俗話には聞き覚えのある人が多いのではないかと思います。これは一般に「怠けていると怠け者の象徴の牛になってしまう」と理解されていますが、これには少々誤解があります。
いずれもよく読んでみると「怠けてばかりいた者が、人が変わったように勤勉になった」という変身の際に「牛になった」という表現をされているのです。牛は勤勉の象徴であるというのが正しく、牛は怠慢だ、愚鈍だ、というのは多いな誤りというわけです。
実際、古来から日本に伝えられている牛の話にはいずれも勤勉に働く様子が描かれており、臥牛を眷属とする天満宮では学業・芸術の成就をご利益としていますから、昔から専門領域で勤勉に働く人の象徴であったことが分かります。
一方、牛にはひとつごとに集中する勤勉な側面とはまた異なる、もうひとつの顔があります。
むかし、あるところに牛頭天王という覇者がいた。
この王は嫁をとろうと旅をし、ある村まで来て疲れて飢えてしまった。
そこへ「古単将来」という男が通りかかったので一晩の宿を頼んだが、この男はこれを無下に断った。
困っていた牛頭天王のところへまた別の男が通りかかった。この男は「蘇民将来」といい、貧しかったが喜んで宿を与え、粟の飯を振る舞った。
すっかり元気になった牛頭天王は蘇民に礼を言い、自分が帰り道で通りかかるまでに「自分は蘇民将来とその家族である」というしるしを玄関に出しておけ、と言い残して旅立った。
牛頭天王は海を越えて旅をし、龍宮の美しい姫と結ばれて八人の子供をもうけると、自分の国に戻ることにした。
その帰路、牛頭天王は古単の国を襲った。恐れをなした古単は千人の僧に経を読ませて牛頭天王を遠ざけようとしたが、そのうちひとりが居眠りをしたために結界が破れ、あっという間に蹴散らされてしまった。
軒先に「我、蘇民将来の子孫なり」という護符をさげていた蘇民とその家族たちは助かり、いらい今でもこの護符は魔除けとして伝わっているという。
これは全国に二千社以上あるという祇園信仰の社、八坂神社を始めとした神社群に伝わる民話で、コロナ禍でも大量の参拝者による祈願に用いられた「茅の輪くぐり」という行事にも同じく「我、蘇民将来の子孫なり」という唱え文句が使用されています。
牛頭天王だけでなく、世界にはこのように「災禍を齎す荒神としての牛」という話が多く残っています。人身御供とも関連する話が多いのですが、これは牛と関連して発生してきた天然痘の影響によるものと推測できます。
中世まで、牛は人間にとって貴重な重機・運送手段である一方で、その取り扱いを誤ると疫病がたちまち広がる恐ろしい側面を持っていました。事実、日本には古代~中世に何度も天然痘の大流行が発生しています。
こうした二面性は牛そのものの性質、つまり「普段は穏やかな草食動物である」「一度興奮すると巨体を全力で振るって暴れる」という二面性と合致します。これは世界各国に残る「優しい牛」「恐ろしい牛」のバリエーションと一致しますから、その信仰の形態は本質的に共通していると言えます。
また、牛は大規模灌漑農業や開拓において大活躍します。牛は重機ですから、土を起こしたり木を運んだりするのにうってつけなのです。
こうした自然状態への牛の介入は「龍退治」の伝説として表出します。資源を独り占めしている龍を英雄が倒し、その恵みを人々に分かち合うというもので、英雄には角が生えていたり、僧や聖職者として求道している共通点を持っています。龍退治は牛の仕事なのです。
牛は他のトーテムとの交差が多く、龍の他に猿、狐、鳥、蛇、犬と関連する伝承がありますが、やり始めるときりがないのでこの辺にしておきましょう。
牛が一点に集中して発揮する勤勉さは人類の叡智のフロンティアです。太古の昔から現在に至るまで、牛の活躍は私たちの生活を豊かにしてきたというわけですね。
今を生きる牛にもまた、ひとつごとに集中する素敵な環境が用意されてほしいと切に願っています。

牛トーテムイメージキャラクター:川相章